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TIG に憧れて、半自動を見せたくなるまで — BeadX Journal #012
BeadX Journal #012 Japan Workforce Deep Dive

TIG に憧れて、半自動を見せたくなるまで

うまくできた 1 本なのに、写真にすると伝わらない。そんなビードは、ありませんか。
SNS の投稿数で目立つのは TIG のうろこ模様。一方、資格者数や材料の量で見ると多いのは半自動だ。TIG のうろこに憧れて入ってきたハジメに、タツさんは「写真だけじゃ分からねえ仕事もある」と返す。
きれいだから見たくなるのか。自分にも覚えがあるから目が止まるのか。今号は、溶接の見せ方を編集部で考える。
2026-09-20  |  JAPAN  |  写真の先にある、仕事の話

何が起きたか

TIG のうろこ模様を見て、溶接に憧れた。編集部のハジメはそう話す。だが、最初に覚えたのは手棒で、その次が半自動だった。きれいだと思った溶接と、いま取り組んでいる溶接は違う。これはハジメの話だが、自分の入口を思い出す読者もいるかもしれない。

向きの違いは、数字にもうっすら出ている。Instagram の投稿数を第三者の集計サイトで見ると、#tigwelding が約 60 万件、#migwelding が約 24 万件、#stickwelding が約 18 万件。一方で日本溶接協会の資料では、2024 年 4 月 1 日現在の半自動溶接技能者の有資格者は 90,697 人。手アーク(69,357 人)、ステンレス鋼(51,803 人)と並べると、この 3 つでは一番多い。ただし、投稿数は見た人の数ではないし、資格の区分をそのまま工法別の働き手の人数にもできない。違う数字を並べて、人気と仕事の順位が逆だと言い切るのは難しい。

そこで今号は、数字の順位から少し離れる。BeadX の Instagram でも、手棒の失敗を描いた回が多くの人に見られた。完成した 1 本の美しさと、うまくいかなかった時の記憶。どちらにも見る理由があるとしたら、普段の仕事には、まだ見せていない何があるのだろう。前号の 1 問「あなたが最初に覚えた溶接は?」の答えと合わせて、編集部で考える。

参考:日本溶接協会 協会案内「溶接技能者の資格認証」(2024 年 4 月 1 日現在)/best-hashtags.com のハッシュタグ件数(2026 年 9 月 12 日取得・サイトの集計は 2024 年 10 月時点・投稿数の目安)/BeadX 編集部の Instagram 記録(2026 年 8 月・対象回と計測時点は記事末尾)
※ 詳細な出典は記事末尾へ
今日の論点
写真で伝わる上手さと、現場で頼りにされる上手さ。その間にあるものを、どう見せればいいのか。

編集部の議論

BeadX Journal 編集部:ツナギ編集長・ハジメ・タツさん・葵博士・レイ
ツナギ

ハジメくん、憧れた溶接と、いま毎日やっている溶接は同じですか。

ハジメ

違います。憧れたのは TIG です。うろこ模様のビードとか、焼け色が虹みたいになってるやつ。あれを見て「溶接ってかっこいい」と思いました。手棒は、正直、暗くて何やってるか分からなかったです。

タツさん

で、入ってから最初に持たされたのは?

ハジメ

手棒でした。次が半自動。TIG はまだ触らせてもらえてません。

タツさん

そういうもんだ。うちもそうだった。

葵博士

ただ、ハジメくんと同じ入口の人が、どれだけいるかは分かりません。SNS の投稿数で分かるのは発信の量です。若手が何を見て入ってきたかは、本人に聞かないと。

レイ

そうですね。採用したい会社と、これから働く人が、同じ動画に同じものを求めるとも限りません。ハジメくんは、いまの仕事を友達に見せたくなりますか。

ハジメ

うまくできた時は見せたいです。でも、どこが難しかったかまで伝えるのは難しいです。

写真で分かること、分からないこと
ハジメ

なんで TIG ばかり映えるんですか。半自動のビードだって、うまい人のはきれいですよね。

タツさん

半自動だって、見せたくなるビードはある。ただ、その 1 本のどこで苦労したかは、写真だけじゃ分からねえこともある。

葵博士

TIG はスパッタが少なく、手元を見せやすい面があります。ただ、半自動や手棒も撮り方次第です。映りやすさだけで腕は比べられません。完成したビードで伝わることと、作業の途中を見せて初めて伝わることを、分けて考えたいです。

レイ

海外の例を 1 つだけ。米国の Welding Tips and Tricks の Jody Collier は、自分の店で TIG Finger という指を熱から守る道具も売っています。動画で見た技を自分でも試したい。その人に道具を届ける商売だと読めます。再生されたかに加えて、見た人が何をしたくなったかを見る必要があります。

ツナギ

写真に写るのは仕上がり。写らないのは、そこまでの判断。ここまでは揃いました。

憧れた仕事と、いまの仕事
ハジメ

僕みたいに TIG に憧れて入ってきて、手棒と半自動を持たされる人って、多いんですか。

葵博士

編集部の投票で覚え方を聞いた時は、9 人中 3 人が「ほぼ独学、動画を含む」でした。ただ、見た工法までは聞いていません。別に、半自動溶接機の設定を教えてほしいという声が、読者から 1 件届いています。入口の憧れと、働き始めてから知りたいことは、分けて聞いた方がよさそうです。

タツさん

憧れた工法があるのはいい。いま任されてる仕事も、間に合わせのつもりでやるなよ。そこで身につく判断がある。TIG は薄物や配管の初層にも使う。半自動は鉄骨と造船だ。量の仕事だな。車は、同じ半自動をほとんどロボットがやってる。どっちも要る。

レイ

採用したい会社から見れば、再生数だけでは足りません。動画を見た人が、ここで自分も働く姿を想像できるか。半自動の発信でも、教える技術と、その技術を使う仕事を一緒に見せる余地があると思います。

ハジメ

半自動がかっこよく見える発信って、無いんですか。

葵博士

あります。2025 年の取材記事では、北海道の鉄工所で働く溶接士が、資格の解説動画をきっかけに知られるようになった経緯が紹介されています。競技会で優勝した人が、その動画で学んだという話もあります。完成したビードに加えて、そこに至る手順にも見る理由があるんです。

同じ 1 本に、見る理由が 2 つ
ツナギ

BeadX でも、手棒の失敗を描いた回が広く見られました。

レイ

クレーターを埋めなかった回は、投稿から 8 日で 31,569 閲覧。立向きの回は、投稿から 66 時間で 14,445 閲覧でした。ただ、この数字だけで、手棒の方が TIG より見られるとも、見た理由が共感だったとも言えません。

タツさん

俺なら、きれいな 1 本も見る。でも、失敗した形を見て手が止まることもある。「これ、俺もやったな」ってな。

葵博士

その 2 つを、ここでは「見せる映え」と「思い出す映え」と呼んでみたいです。ただ、工法で分かれるとは限りません。TIG にも失敗はあるし、半自動にも見せたい美しさはあります。

ハジメ

でも、自分の失敗を見せるのは、やっぱり嫌です。下手だと思われませんか。

タツさん

嫌なら無理に出さなくていい。俺が聞きたいのは、どこでおかしいと思って、何を変えたかだ。失敗した形だけ見せられても、そこまでは分からねえ。

葵博士

そこは賛成です。見た目だけでは、なぜそうなったかを決められません。条件と、その人が何を見て判断したかまで添えてほしいです。

レイ

料理と同じですね。完成写真で作りたくなることもあれば、つまずいた手順の説明が役に立つこともある。どちらが上かを決めるより、見た人が次に何をできるようになるかを考えたいです。

この 1 本の、どこを見る? 写真で分かる=形・色・仕上がりを見る/写真に写らない=条件・迷った点・変えたことを知る
ツナギ

きれいなビードを見せることと、そこに至る判断を伝えること。どちらも要ります。ハジメくんの「失敗は見せづらい」も残りました。見せる側の気持ちまで含めて、ここからは見立てに回します。


Xデーまで、いま何合目?

Xデー=人型ロボットが実戦の現場で「溶接そのもの」を担う、世界初の日。
BeadX Journal は、その日までの道のりを毎号同じ物差しで定点観測します。
葵博士

前号の現在地は 5 合目です。今号で見た工法の資料だけでは、合目は動かしません。

1 つだけ、物差しに書き足します。TIG にも自動化された溶接はあります。配管の周りをトーチが回るオービタル溶接は、1960 年代の初めに航空宇宙と原子力の分野で生まれ、いまはステンレスの配管などに使われています。だから「TIG は人に残る工法」とは言えない。人型がどこまで進んだかを見るには、工法名に加えて、どんな作業を、どの程度自分で行ったかの確認が要ります。HD Hyundai と Persona AI などは、造船所での溶接を担う人型を開発中です。具体的な工法と、現場で担える範囲は、引き続き確認します。

10実戦投入第 1 号 = Xデー
9 品質・安全の認証クリア
8 人の監督付き・限定工程での試験運用
7 実環境でのテスト溶接
6 ラボで安定した連続溶接
5 ★ いまここ|人型プロトタイプ完成・初溶接前倒し
4 人型が溶接工の動き・判断をデータ化済
3 非ヒト型の自律溶接が実環境で実証済〜進行中
2 AI 適応溶接(シームトラッキング)が実用化済
1 固定アームのロボットが定型溶接を置き換え済
現在地:5 合目(変わらず)

見せ方の議論と、現場で何ができるかの確認。それぞれの物差しで追います。


前号の投票

前号の 1 問「あなたが最初に覚えた溶接は、どれですか?」。

答えてくれたのは 12 人。手棒(被覆アーク)が 5 人、半自動(CO2・MAG)が 4 人、TIG が 3 人。「その他(レーザーなど)」は 0 人でした。

一番多いのは手棒ですが、12 人中 7 人は手棒以外から入っています。半自動のワイヤの生産量が被覆アーク溶接棒を逆転したのは 1984 年。それから 40 年たって、入口は 1 つではなくなりました。ハジメは手棒から入って、TIG に憧れている。TIG から入った 3 人は、いま何を見せたいのか。今号の 1 問は、その続きです。タツさんの感想は「どこから入ってもいい。入ったところで手を抜くな」。

展示会の週には、Instagram で別の 1 問も聞きました。「あなたの現場の主役は?」。答えてくれた 14 人のうち、手棒が 7 人、半自動が 5 人、TIG が 2 人、レーザーは 0 人。資格を持つ人の数では半自動が一番多いのに、BeadX の読者では手棒が半分でした。手棒の失敗を描いた回から読み始めた人が多いからだと見ています。どちらも答えてくれた人の範囲の記録で、業界全体の割合ではありません。

人に見せたくなるビードは、どの溶接ですか?
1手棒(被覆アーク)
2半自動(CO2・MAG)
3TIG
4見せたいと思わない
投票は Substack / X で受付中。結果と編集部の講評は次号で。あなたの現場の実感で選んでください。
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※BeadX Journal は、実在する製造業経営者が主宰しています。どのニュースを取り上げ、何を問い、どう見立てるか。そこには毎号かならず人の判断が入っています。編集部メンバーは AI キャラクターであり、実在の人物・団体とは関係ありません。議論は実在のニュース・公開情報に基づいていますが、各メンバーの発言は AI が生成した見解です。
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次の号は、土曜 10 時に届きます。

溶接とものづくりのニュースを毎週ひとつ取り上げ、5 人の編集部が議論します。最後に読者投票が 1 問。無料で、登録はメールアドレスだけ。いつでも解除できます。

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