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TIG / TROUBLESHOOTING

TIG溶接の
溶接焼け・黒ずみステンレスの表面と裏面を分けて確認

ステンレスのTIG溶接で起きる溶接焼け・黒ずみを整理。シールドと入熱の確認箇所、ガス流量の一般例、表面処理の種類を、国内外の出典とともにまとめます。

最終更新 BeadX 運営事務局
この記事の目次
  1. 黒い場所と、確かめる項目を分ける
  2. 「もっとガスを流す」で決めない
  3. heat tint は表裏共通。sugaring は裏面酸化の呼び名
  4. 色の表から分かること、決められないこと
  5. 黒くなった後は、表面処理の確認も
  6. 出典の一覧

ステンレスを TIG 溶接したら、ビードが黒い。そんなときは、色の名前だけで原因を決めず、表面か裏面か、シールドの状態はどうか、入熱はどうかを分けて見ます。

ステンレスの溶接部に生じる変色には、高温でできた酸化物が関わります。また、TIG の技術資料では、ガスによる保護の不足と、ステンレスへの過大な入熱が別の問題として扱われています。この記事は、それらを照合して確認箇所を整理したものです。日本溶接協会の色と耐食性の解説、Miller の TIG トラブル解説

日本溶接協会の Q&A は、ステンレスの溶接部が黒くなるこの現象を「溶接焼け」と呼んでいます。この記事でも、現象の名前として使います。日本溶接協会 Q&A の冒頭

対象はステンレスの TIG 溶接です。色による合否表や、そのまま使える施工条件表ではありません。

Check黒い場所と、確かめる項目を分ける

表側・裏側を、別々に確かめるFIGURE 01
01 / FRONT表側ガスの種類・流量・風入熱(電流・速度・アーク長)母材の断面(模式)02 / BACK裏側裏面の保護条件heat tint は表・裏の両方に使う言葉
01 / FRONT表側ガスの種類・流量・風入熱(電流・速度・アーク長)母材の断面(模式)02 / BACK裏側裏面の保護条件heat tint は表・裏の両方に使う言葉
位置関係を示す模式図。実際の変色・欠陥・溶込み形状を再現したものではありません。
出典:TWI、Miller、日本溶接協会掲載資料
BeadX 作図

この表は原因を断定する診断表ではなく、資料を調べる入口です。

気になっていること資料に書かれていること確認したい情報
表側のビードや周囲が変色したガスによる保護と、熱のかかり方は、どちらも変色に関係するガスの種類、流量設定、風の影響。電流だけでなく溶接速度やアーク長も記録する
ガスは出ているはずなのに、シールドの状態が気になるガス流量は少なすぎても多すぎても問題となる。過大な流量による乱れや、ホース・継手からの空気の混入も確認項目流量の表示だけで判断せず、機器の説明書のガス系統・トーチの点検項目を確認する
裏面の溶接部が黒いMiller は、ステンレス溶接部の裏面酸化を sugaring と呼んでいる裏面の保護条件。表側と裏側の状況を別々に記録する
色から温度や仕上がりを判断したい色は鋼の成分、雰囲気、加熱時間、表面状態にも左右される材質と施工条件。別の資料の色見本だけで温度を決めない

出典:Miller「Problem #1・#6・#7・#9」、英国ステンレス鋼協会(BSSA)の変色解説、TWI の裏面酸化の解説。

Gas「もっとガスを流す」で決めない

Miller は、過大なガス流量が流れを乱し、空気中の汚染物を巻き込む場合があると説明しています。ガスによる保護の不足は、単に流量の少なさだけを指すわけではありません。Miller のガスシールドの項目

日本溶接協会掲載の解説では、TIG のガス流量の一般的な値として 5〜15 L/min 程度を紹介しています。同じ箇所で、ノズルの内径や作業環境によって必要な量が変わり、流しすぎると大気を巻き込むことも説明しています。この範囲は資料の一般例で、使用機器への設定指示ではありません。日本溶接協会掲載のシールドガス解説・本文 p.7

同資料は、夏場のエアコンを含む風の影響にも触れています。また、長い距離を通常のゴムホースで供給した場合、外気の水分が透過し、ガス中の水分が増える可能性を説明しています。ガスの量だけでなく、周囲の風、ホースの種類や長さも確認事項です。同解説・本文 pp.6〜8

流量を変える前に、使用機器の説明書で、ガスの種類・流量の指定と点検項目を照合してください。

ガスの呼び名を整理したい場合は、シールドガスの比較へ。

Wordsheat tint は表裏共通。sugaring は裏面酸化の呼び名

日本溶接協会は、ステンレスの溶接部に生じる酸化による着色を「テンパーカラー」と説明しています。BSSA の解説では heat tint と temper colour が使われています。日本溶接協会、BSSA

heat tint は表側専用の用語ではありません。 TWI は裏側のルートビードとその近くの熱影響部の酸化にも heat-tint を使っています。表・裏の両方で使う、酸化による着色の呼び名として読みます。一方、sugaring は Miller がステンレス溶接部の裏面酸化に使っている呼び名です。「heat tint=表、sugaring=裏」という二分ではありません。Miller の sugaring の項目、TWI の冒頭の定義

ここでは海外資料の用語を日本語で説明しています。海外の写真や色見本を、そのまま日本の検査基準として使うものではありません。

Limits色の表から分かること、決められないこと

BSSA は、すべての場合に当てはまる「色と温度の対応表」はないと説明しています。色は温度だけでは決まらないためです。この記事でも、「この色なら何度」「この色までなら合格」という表は設けません。BSSA の解説

また、日本溶接協会と TWI は、変色を伴う酸化が耐食性に影響する場合を説明しています。見た目だけの問題として片付けず、要求される耐食性や表面仕上げは、製品の仕様と担当者に確認してください。日本溶接協会、TWI

相談するときは、表面と裏面の写真に加え、材質・板厚、ガスの種類と流量設定、電流・溶接速度、トーチや周囲の条件を添えると、この記事の確認項目をまとめて伝えられます。これは相談用の整理で、製品の合否判定を代行するものではありません。

After黒くなった後は、表面処理の確認も

日本溶接協会は、溶接後の酸化による着色を除く方法として、研磨、ブラスト、酸洗などの表面処理を説明しています。TWI も、耐食性の回復に関して、酸化スケールとクロムが減った層を溶接後の処理で除去する必要があると述べています。日本溶接協会 Q&A、TWI の表面処理の説明

これは表面の処理の話です。過熱した材料の性質まで、色を落とすだけで回復するという意味ではありません。適用する方法は、材質・製品仕様に合わせて担当者に確認してください。安全に関わる施工手順や薬品の扱いは専門家の確認が要るため、ここでは方法名の紹介までとします。

SOURCES / 出典

確かめられる情報を、ここに。

本文の各リンクから、根拠となる資料へ移動できます。確認日:2026.09.30

  1. Miller
    Common TIG Welding ProblemsProblem #1・#6・#7・#9(ガスシールド・変色・裏面酸化・アーク長)
  2. TWI
    Avoiding heat-tint during welding of stainless steels用語の定義・裏面保護・表面処理
  3. British Stainless Steel Association
    Heat Tint (Temper) Colours on Stainless Steel Surface Heated in Air色に影響する条件・温度表の適用限界
FIELD QUESTION / 次は、あなたの判断。

流量計は、いつもどおり。
それでも黒い。

ステンレスの TIG。風や溶接条件は確認したのに、ビードが黒い。あなたなら、次に何を確かめますか?

ほかの現場の判断も考えてみたい方は、BeadX の「現場の 10 問」へ。

現場の 10 問で腕試しする出題内容は回によって変わります。資格試験の模擬問題ではありません。