溶接棒とワイヤのイメージ
MATERIALS / COMPARISON

溶接棒・ワイヤ比較表被覆アーク+半自動

被覆アーク溶接棒 4 系統と半自動ワイヤ(ソリッド/FCW)を、JIS 分類と現場の定番銘柄で整理した比較ページ。板厚・姿勢・母材・優先事項から引ける逆引き表付き。

最終更新 BeadX 運営事務局
この記事の目次
  1. まず全体像:被覆アーク溶接棒は 4 系統
  2. 系統別の使い分け
  3. 現場の定番銘柄マップ(神戸製鋼・日鉄溶接工業)
  4. 半自動ワイヤの使い分け(ソリッド/フラックス入り)
  5. 逆引き表:条件からの選定
  6. 覚えておくと得する 3 行
  7. 参考規格

「今日の材料と姿勢なら、どの棒(ワイヤ)を使うか」に即答するための比較ページです。被覆アーク溶接棒(軟鋼〜490MPa 級)と半自動ワイヤを、JIS 分類と現場の定番銘柄で整理しました。

※ 銘柄のスペックは各メーカーのカタログが正本です。本ページの数値・分類は 2026 年 8 月時点で Web 上の公開情報を確認したもの。「要確認」注記のある箇所は使用前にカタログで裏を取ってください。

The Basicsまず全体像:被覆アーク溶接棒は 4 系統

軟鋼用の被覆アーク溶接棒は、被覆剤(フラックス)の系統で性格が決まります。JIS Z 3211 の分類記号と合わせて覚えると、初見の棒でも性格が読めます。

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系統JIS Z 3211AWS 相当一言でいうと
イルミナイト系E4319E6019日本生まれの万能選手。溶込みと作業性のバランス
ライムチタニヤ系E4303E6013 相当作業性とビード外観の優等生。薄板・すみ肉に強い
高酸化チタン系E4313E6013アークが軽く薄板向き。強度部材には使わない
低水素系E4316 / E4916E7016 相当耐割れ・強度重視。厚板・拘束の大きい継手はこれ

※ 旧 JIS 表記(D4301、D4303、D4313、D4316)の時代のカタログ・教科書も現役で流通しています。「D→E」に読み替えれば同じ系統です。

By Type系統別の使い分け

イルミナイト系(E4319)

  • 板厚 20mm 程度までの軟鋼の全姿勢溶接に幅広く対応。突合せもすみ肉もいける
  • スラグの被りとビード外観が良く、X 線性能(内部品質)も安定
  • JIS 検定(技能者評価試験)の定番でもあり、練習用としても王道
  • 弱点:低水素系ほどの耐割れ性はない。高張力鋼・厚板の強度部材には使わない

ライムチタニヤ系(E4303)

  • 軽量鉄骨・車両・建築の組立など「量をこなす」現場の定番
  • 再アーク性(アークの再始動)とスラグはく離が良く、タック→本溶接のテンポが速い
  • ヒュームが比較的少なめの銘柄が多い
  • 弱点:イルミナイト系より溶込みが浅め。厚板の 1 パス目には向かない

高酸化チタン系(E4313)

  • アークが柔らかくスパッタが少ない。薄板の外観重視・立向下進に強い銘柄がある
  • 弱点:溶着金属の機械的性質は他系統より劣る。強度計算に入る部材には使わない

低水素系(E4316 / E4916)

  • 溶着金属の拡散性水素が少なく、低温割れに強い。厚板・拘束の大きい継手・490MPa 級高張力鋼はこれ一択
  • E4316 は軟鋼〜430MPa 級、E4916 は 490MPa 級高張力鋼用
  • 造船・橋梁・圧力容器など、強度と品質が問われる構造物の主力
  • 弱点:アークスタートが難しく、運棒の練習が要る。そして乾燥管理が必須

乾燥(再乾燥)の目安

系統再乾燥の目安
イルミナイト系・ライムチタニヤ系・高酸化チタン系70〜100℃ で 30〜60 分
低水素系300〜400℃ で 30〜60 分

※ 温度・時間は一般的な目安。銘柄ごとの指定値(要確認)に必ず従ってください。低水素系を乾燥せずに使うと、水素量が増えて割れのリスクがそのまま上がります。

Brand Map現場の定番銘柄マップ(神戸製鋼・日鉄溶接工業)

日本の現場で名前が通っている代表銘柄です。同じ JIS 分類でも銘柄ごとに性格が違い、無条件で置き換えられるとは限りません。切り替え時は要試験・要確認。

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系統JIS神戸製鋼日鉄溶接工業現場での立ち位置
イルミナイト系E4319B-17A-17溶接性(品質)重視型
イルミナイト系E4319B-14A-14バランス型。イルミナイトの代表格
イルミナイト系E4319B-10A-10作業性重視型
ライムチタニヤ系E4303Z-44(ZERODE-44)NS-03Hi「溶接棒の代表格」。軽鉄・車両・建築の定番
高酸化チタン系E4313B-33S-13Z薄板向け
高酸化チタン系E4313RB-26FT-51立向下進対応。スパッタ少なく光沢ビード
低水素系E4316LB-26S-16軟鋼の強度部材
低水素系E4316LB-47(相当品は要確認)全姿勢の作業性が良く、JIS 検定でも定番
低水素系E4916LB-52L-55490MPa 級高張力鋼の主力。造船・橋梁・圧力容器
低水素系(仮付け用)E4948(要確認)LB-52TTW-50仮付け・タック専用設計

補足を 3 つ。

1 つ目、B-14 と Z-44 は「とりあえずこれ」と言われるほどの汎用定番。迷ったら現場の先輩が使っている方に合わせて問題ない。

2 つ目、LB 系(低水素)は棒径・電流条件がシビアな分、仕上がりの品質が別格。検定や本番構造物で使うなら練習段階から LB で慣れておくのが近道。

3 つ目、AWS 表記(E6013、E7016 など)は輸入機材のマニュアルや海外資格でよく出ます。JIS との対応(E4303 ≒ E6013、E4916 ≒ E7016)を頭の隅に置いておくと図面・仕様書で迷いません。

MAG Wire半自動ワイヤの使い分け(ソリッド/フラックス入り)

半自動(マグ溶接)はまずワイヤの種類で分かれます。

ソリッドワイヤ(JIS Z 3312)

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JIS電流域姿勢シールドガス代表銘柄
YGW11大電流下向・水平すみ肉CO2神鋼 MG-50、日鉄 YM-26
YGW12小〜中電流全姿勢CO2(混合ガスも可)神鋼 MG-50T・SE-50T、日鉄 YM-28
YGW15大電流下向・水平すみ肉Ar+CO2 混合ガス(銘柄は要確認)
YGW16小〜中電流全姿勢Ar+CO2 混合ガス(銘柄は要確認)
  • YGW11 と YGW12 の成分上の違いは Ti(+Al、Zr)の有無。YGW11 は Ti 等の添加で大電流域のアークが安定し、ビード形状が良い。厚板を下向きでガンガン流す用
  • YGW12 は薄板〜中板の全姿勢用。街の鉄工所の半自動機に巻いてあるのはだいたいこれ
  • 混合ガス(MAG)ならスパッタがさらに減る。ガス代と相談

フラックス入りワイヤ(FCW、JIS Z 3313)

  • 代表銘柄:神戸製鋼 DW-100(JIS Z 3313 T49J0T1-1CA-U、AWS E71T-1C)。全姿勢用ルチール系(スラグ系)の定番で、造船・橋梁・鉄骨で広く使われる
  • 特徴:アークが柔らかくスパッタが少ない。ビード外観が良く、スラグが全姿勢の溶融池を支えてくれるので立向・上向が楽
  • 亜鉛メッキ鋼板向けの派生(DW-Z100 など)もある
  • 弱点:ワイヤ単価はソリッドより高い。スラグ除去の手間が増える

ソリッドか FCW か

判断軸ソリッド(YGW12 等)FCW(DW-100 等)
ワイヤ単価安い高い
全姿勢の作業性普通良い(スラグが支える)
ビード外観普通良い
スラグ処理ほぼ不要毎パス必要
向く現場下向き中心・コスト重視立向・上向が多い、外観と能率重視

Reverse Lookup逆引き表:条件からの選定

「板厚・姿勢・母材・優先事項」から引く早見表です。最終決定は WPS(溶接施工要領書)と監督者の指示が優先。

被覆アーク溶接棒

条件推奨代表銘柄
軟鋼・薄板(3mm 前後)・外観重視ライムチタニヤ系 or 高酸化チタン系Z-44、B-33
軟鋼・中厚板(〜20mm)・オールラウンドイルミナイト系B-14、B-17
軟鋼・とにかく作業性優先(組立・数物)ライムチタニヤ系Z-44、NS-03Hi
立向下進で速く流したい高酸化チタン系(下進対応銘柄)RB-26
厚板・拘束大・強度優先低水素系LB-26、LB-47
490MPa 級高張力鋼低水素系(490MPa 級)LB-52、L-55
仮付け(タック)を数多く仮付け用低水素系LB-52T、TW-50
JIS 検定の受験イルミナイト系+低水素系B-14+LB-47 が定番の組み合わせ
屋外・風のある現場被覆アークそのものが有利(半自動よりシールドが風に強い)上記から条件で選ぶ

半自動ワイヤ

条件推奨
厚板・下向き・能率最優先YGW11(MG-50、YM-26)を大電流で
薄板〜中板・姿勢が混ざるYGW12(MG-50T、SE-50T、YM-28)
スパッタを減らしたい・外観重視混合ガス化(YGW16 等)か FCW(DW-100)
立向・上向が多い構造物FCW(DW-100 系)。スラグが姿勢溶接を助ける
亜鉛メッキ鋼板メッキ対応 FCW(DW-Z100 など。要確認)
コスト最優先・下向き量産ソリッド YGW12+CO2

Cheat Notes覚えておくと得する 3 行

1 つ目、棒は「系統」で選び、「銘柄」で仕上げる。JIS 分類が同じでも銘柄で性格が違う。

2 つ目、低水素系は乾燥までが銘柄選び。300〜400℃ の再乾燥を飛ばした LB は LB の性能が出ない。

3 つ目、半自動は「電流域と姿勢」でワイヤが決まる。厚板下向きは YGW11、それ以外はまず YGW12、姿勢物の仕上がりは FCW。

Standards参考規格

  • JIS Z 3211(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒)
  • JIS Z 3312(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用のマグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ)
  • JIS Z 3313(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ)
  • AWS A5.1 / A5.20(米国規格。輸入機材・海外案件の読み替え用)

図面の読み方は姉妹ページの溶接記号チートシートへ。「図面を読む→棒を選ぶ」の順で使ってください。

FIELD QUESTION / 次は、あなたの判断。

棒を選んだ、その次は?

低水素系の溶接棒。箱を開けたまま置いていたけれど、見た目は乾いている。あなたなら、使う前に何を確かめますか?

棒の選び方から、現場での判断へ。BeadX の「現場の 10 問」で、ほかの場面も考えてみませんか。

現場の 10 問で腕試しする出題内容は回によって変わります。資格試験の模擬問題ではありません。